メトロノミクス(がん休眠療法)

メトロノーム検索サイトで「メトロノミクス」と入れても殆ど出てこないと思います。
それほどマイナーな用語のようです。

メトロノミクスとはがん休眠療法の一つです。

手術不能の患者に対しては延命治療として標準量の抗癌剤を使用しますが、副作用等で減量する場合でも20%下げて標準の8割にすることはあり得ます。

先ずはガイドラインで一番定評のあるレジメン(料理のレシピの様なもの)を使います。
それを、ファーストライン(1番目)治療と呼びます。
ファーストラインで効果が有り癌が小さくなることはあります。そのままCT画像に映らなくなり4週間持続出来れば「寛解」もしくはCR(Complete response)と呼びます。

しかし、CRになるのは珍しい類いで、暫くしてから癌が大きくなってしまうこともしばしばです。
また、当初は効果が有って癌が小さくなっても、また大きくなってしまう場合や副作用で継続が困難な場合はセカンドライン(2番目の治療)に移ります。
それも駄目ならサードライン(3番目の治療)に移るのですが、1番効果が有るとされるファーストラインから次に可能性が有るセカンドラインと順次効果の低い治療への切り替えですから、サードラインとなるとほぼ賭けみたいになってきます。

その次はどうなるかと言えば、「緩和ケアかホスピスを探された方が・・・」と諦められてしまうのが一般的です。


「がん休眠療法」は基本的にはここからが始まりになります。

基本的にとは患者本人が標準治療を望まない場合や副作用で脱落する場合やセカンドライン以降の有用性が見いだせないと医師が判断した場合などが考えられます。

がん休眠療法と標準治療の考え方の違いは異なります

標準治療は癌を小さくするか大きくしないことを目標にしますが、休眠療法は腫瘍縮小を考えず緩やかに大きくなれば、その分の時間は生きられることを目標とするのです。

しかし、対象者の全ての方が癌休眠療法が出来るわけではありません。
前治療で骨髄機能が損なわれ、白血球や赤血球があまり作れなくなった方や体力が著しく落ちている方は難しいと思います。

がん休眠療法でも多剤併用で小量とか単剤小量、休薬期間の設定等の考え方で違いがあります。

メトロノミクスはメトロノームの様に絶え間なく(週に1~2回)小量の抗癌剤を使って、あまり休薬期間を作らない治療法です。

どの休眠療法が良いかは比較試験が無いためにわかりません。

ただ、体表面面積だけで薬の量を決める標準量が本当に良いかは疑問が残ります。
人によっては標準量が良い方も居れば、少ない方が効く方も居るはずです。
抗癌剤の使用量を決める試験で少ない量で効果が出ていることもあります。
耐容限界以下で一番確率の高い量を決定するのも理解出来ますが、自分がその標準に合致しない体だったらどうなるのかと疑問が残ります。


昔、国立がんセンターに入院して抗癌剤治療をしている方の身内から相談がありました。
「抗癌剤治療をする度に腫瘍マーカーが倍になってくる、どうしたら良いですか」
そんな内容でした。
レジメンは忘れましたが、1投3休(1週目に抗癌剤を使って、後の3週は休薬期間)でした。
「がんセンターでは減量はしてくれませんから、休薬期間を1週延ばすくらいは可能では無いでしょうか」とアドバイスしますと、Drは応じてくれたそうです。すると、「腫瘍マーカーが上がらなくなった」と連絡がありました。

「それでは無理言って、もう1週空けて貰ったらどうですか」
すると、「マーカーが下がりました」と連絡がありました。

本来なら、この患者さんはもう少し少ない量で1投3休が出来たら結果は違っていたかもしれません。


また、十二指腸スキルス癌の再発の方が都内の大病院で抗癌剤治療をするとマーカーがどんどん上がってきますので、梅沢充先生のところで低用量抗癌剤治療をはじめました。
梅沢先生がどんどん量を減らして行き、標準量の1/10まで減らした時にCRになりました。
この方はBRMstageを呑んでいましたが、抗癌剤との併用が良かったのかもしれません。
しかし、だいぶ時が経ってから再々発された時には抗癌剤を使用せずにCRになっています。癌治療は不思議なことがたくさんあります。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です