キーパーソン

※写真はイメージです医療において「キーパーソン」は誰を指すのでしょうか。
軽度な疾患で成人であれば自身で医療機関に行き症状を説明して、医師から診断名を聞き説明を受けるでしょう。その場合のキーパーソンは患者本人となりますが、手術の説明や化学療法の説明となると家族の同行を求められることも多いです。
医師はその家族の中から「キーパーソン」が誰であるかを発言から見抜くものです。
キーパーソンを間違えていると治療の同意がなかなか得られず、治療タイミングを逸してしまう場合もありますので、医師にとっても患者にとっても重要な役目となるのですが、普通は医師から「キーパーソンはどなたですか」と聞かれることはありません。

ご夫婦だけの場合は患者さんがご主人ならキーパーソンは奥様になることが多いのですが、そこに子供が含まれますと、キーパーソンが子供になることもあります。
キーパーソンが重要なのは医師からの提案に対して自ら考え、時には患者に説明して、家族をも説得し、出来るだけ早く行動しなくてはならないことです。
政治家のように「その案件は持ち帰り協議の上ご報告致します」ばかりでは駄目だと思います。もちろん、家族に説明してから決めなくてはならないこともありますので、全てキーパーソンが独断で決めるわけではありません。

弟が膵臓癌で緩和ケア病棟に入院している時のことでした。
主治医から名指しで私が呼ばれました。この時点で医師は私がキーパーソンだと確信したからだと思います。
その女性医師はホスピス経験も有る医師でした。「お兄さん、そろそろステロイドを使った方が良いと思うんですが・・・」と話を切り出してきました。
癌治療でステロイド(コルチコステロイド:副腎皮質ホルモン)を使う目的は多くはありません。抗癌剤投与の直前に血管痛を防ぐ目的と痛みを止める場合です。
「えっ、ステロイドですか。免疫が下がってしまいますよね・・」とつい言葉が出てしまいました。
その医師は「CTご覧になりますか」とCTを見せてくれました。
そこに映っていた画像に記憶はありませんが、肝転移が更に進んでいたことは記憶に残っています。そのCTを見せられ「もう、免疫がどうのこうの言っている状況では無い、神経の炎症を取り、痛みを止めるステロイドを使わざるを得ない状況だ」と悟りました。
「ステロイドは何をお使いになる予定ですか?」
「デカドロンを使おうと思います」
「そうですか、お願いします。ただ潰瘍が起きないようにご配慮ください」
「ご心配なく、H2ブロッカーも同時に入れますよ」

手短に話は終わりましたが、僅かな希望すら諦めなくてはならなくなった時でした。

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